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小説 舞の楽園 ( 私は薫 )


         「 薫 」(25)
 「ところで貴女のお名前は・・・・?」
奥様は素敵な笑顔でおっしゃっています。上品さを内に秘めておりますが、ざ
っくばらんな方のようです。
「わたくしは『薫』と呼んで下さいな。本名なのですが、男であった時には嫌
で嫌で耐まらなかった名前ですが、彼の愛撫を受けた今は素直になりまして自
分から名前で呼んで貰うことにしましたのよ」
「素敵な名前じゃないの・・・薫さん・・・」
奥様はいえ千寿さんはそう言って、優しく私の名前を呼んで微笑みました。

 千寿さんは、まず女房としての心得を話してくれたのです。
「旦那様はお外で働いて私たち女を養ってくれるのだから、主人には絶対に家
に帰ったときは嫌な思いをさせないことです」
• ・・・と言うのです。
「今の世の中は女性が強くなったようで、精神的な『蚤の夫婦』が多くなって
来ているような家庭もありますが、それでは旦那様が萎縮してしまうのではな
いかしら・・・ネ。」
「お仕事に励んで貰うことが私たち女房にとっても幸せに繋がる道ではないか
しら・・・」
• ・・・とも、言うのです。
「旦那様が自信を持ってお仕事をすることが、女房に対しても自信を持って
リードをすることに繋がるんじゃないかしら。頼りがいのある旦那様になると
わたしは思いますことよ・・・」
私はその通りだと思って感心して、千寿さんの話を聞いておりました。

 「でも、そのように自信のある男性は女性関係にもルーズになり易いので
はないんでしょうかしら?」
今一番心配で、一番疑問に思っている男性の生理について私は聞いていまし
た。
「わたし達を選んだのは旦那様ですよ。わたし達は元々の女ではないのです
から、それでもわたし達が良いと選んで下さったのですから・・・もしも、
酔ってお帰りが遅くなっていらっしゃったとしても『女の方にお持てになっ
ていらっしゃったのネ。嬉しいワ。流石にわたしの旦那様ネ』と言う位の心
を持たなければならないわ・・・」
千寿さんはそう言って艶然と微笑みました。その笑みはとっても自信に溢れ
ているように私には見えまして、その通りだと思ったのです。

私は俄かに女の心が芽生え大きくなりましたが、男としての人生も永いので
す。飲んで遅くなって女にモテでもした夜にそんなことを女房から言われで
もしたら、何て可愛いことを言う女だと思うだろう。俺にベタ惚れをしてい
るんじゃないか。互いにこの年齢になって恋しい存在があると言うことは嬉
しいことだと、思ってしまうのではないだろうかと思って納得してしまった
のです。
「でも、偶には旦那様に余裕があって機嫌が良くって、甘えさせて貰えそう
な時には『浮気をしないでね。浮気をされると悲しくて悲しくて病気になっ
て、死んでしまうかも知れなくってよ』と言って見ることも大切だと思うの
よ」
とも、言って戴いたのです。【続く】
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