fc2ブログ

記事一覧

小説 舞の楽園  (私の心と肉体 ) <第2部>

   
       私の心と肉体( 第二部 )-13
  「わたくしのような者が健次様のお家を訪ねてもご迷惑かと存じますが・・・ご主
人様のご位牌に手をあわせとうございます・・・」
最後に恐る恐る申し述べたのです。どうしても健次様にお会いしたかったのです。
「健次も喜ぶと思います。親父は伏せっていますが、ちょっと気落ちしたのでしょう。
お線香を上げてやって下さい」
「家までお送りいたします・・・」と言って下さったのです。
健次様の実家に着きますと、上品な女性(お母様)だ向かえて下さったのですが、私は
胸が一杯になって何もお話しすることさえ出来なかったのです。
客間に通されて祀ってあるご位牌の前で手を合わせました。私の目からは大粒の涙が溢
れて来まして止まらないのです。
想い出のイッパイ詰まったあのアパートを引き払って行くこと、バー化女にお勤めが
決まったことなどをご報告しました。化女でのこれからの生活で男の人と同衾するかも
しれないと言うことを話しました。
「妬かないでね。どんなに肉体は許しても、心はご主人様のものよ・・・」と申して
遺影を見ると、遺影の中の健次様はニッコリと微笑んでいました。
「あなた。許して下さいませね。わたしはこの肉体でお金を稼がなければなりませんの
よ・・・」と言って許して貰いました。

 永い間、ご遺影と向かい合っておりました。
何時の間にか、お父様が着物に着替えて、お母様と一緒に私の後ろに座って手を合わせ
ていましたが、私はちょっとも気が付かなかったのです。
お兄様がお茶を運んでいらして、気が付いたのです。
「貴女のような人に愛されて、健次は本当に幸せ者だ・・・」と言って頂いたお父様と
お母様の言葉は忘れられません。
泣くだけ泣いてお屋敷を出たときには、陽も大分傾いておりました。
私は「命のある限り、健様のお墓参りをしましょう・・・」と考えていました。

 今日の出来事で、「人間と言うものは、誠実でなければならない」とつくづく思いま
した。
健次様と一緒に住んだアパートの件でも、もし夜逃げ同然に退去をしていれば、健次様
の実家の方々は「私のことを『なんと言うオカマだろう・・・』と思ったのではないか」
と考えられたでしょう。
女に生まれ変わった私は『これからはどんなことがあろうとも、誠実さだけは失わずに
生きていこう・・・』と決心しました。
あっ。お兄様のおっしゃっていました、「私の人生を作り直すお手伝いのお金」はず~
と後で通帳を確認しましたらば、1000万円が振り込んでありました。
私はもったいなくて、それを使う気になれません。(続く)
   
       私の心と肉体( 第二部 )-14
 身1つでママさんのマンションに引っ越した日曜日。化女も日曜がお休みなのでママ
さんと一緒にデパートへ行きました。
明晩から私がお店で着るドレスや下着、お化粧品をママさんが買ってくれると言うので
す。私の所持金は残り少なくなっておりましたので、ママさんの厚意に甘えています。
デパートではドレスを2着とパンティを何枚か購入しました。ドレスは黒のロングの足
首までのと、赤の膝上までのミニのとです。どちらも肩が紐状になっていて私の白い肌
には似合いそうでした。
パンティも何点か購入していただきました。それも、真っ赤な物や黒のや、紫でお尻の
部分が紐になっていて、薄いものばかりです。
ショーツを履くことを健次様がお許しにならなかったので、それでも私は嬉しかったの
です。何しろショーツは初めて履いたのですから・・・
嬉しくって、何度もママさんにお礼を言っていました。


 その晩のことです。
「一子さん。貴女も男で苦労したわね。だけど・・・死んだ人は生き返らないのだから、
クヨクヨしていてはダメよ。生き残った貴女は強く生きなくっちゃね」
リビングで椅子に座って、ママさんと向かい合ってコーヒーを飲んでお話をしていると、
ママさんがしみじみとした口調で言いました。
引越しをしてから何かと忙しくって、ママさんとはこうした時間が取れませんでした。
私の女になった1年のお話を聞いてくれたママさんはそう言って私を励ましてくれた
のです。
私も『その通りだわ・・・』と思いました。『気を強く持って生きて行きたい』と思
ったのです。それが、『健次様の心に沿う生き方でしょう・・・』と考えたのです。
「はい。ありがとうございます。ママさんにはお勤めから住むところまで、本当に
何から何までお世話になりまして感謝しておりますわ・・・」
私が頭を上げますとママさんは微笑んでいました。

 「ここに置いて頂く間は、どうかわたしを下女と思ってこき使って頂きたいのです。
今もお話したように、わたしはご主人様の愛奴でした。ママさんさえ宜しければ、わた
しはママさんの奴隷になりますことよ・・・」
「何でも、おっしゃって下さいませ。仰せの通りにいたしますことよ・・・」
ママさんには一方ならぬお世話になりながら、私はなにもして上げられないのです。
このママさんの為だったらば、愛奴になっても良いとさえ思ったのです。
立ち上がった私は、この私よりも10歳も年下のママさんの手を取って、甘えるように
額に押し当てていました。
健次様との1年間で、愛奴としての態度が身に付いていたのかも知れません。マゾとし
ての証が出ていたようなのです。(続く)

 






スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

舞

Author:舞
FC2ブログへようこそ!