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小説 舞の楽園 ( 私は薫 )


         「 薫 」(36)
「この感じ方が女性の感じ方なのね・・・」
薫は微笑んで恥らうように言っている。彼女は男性と女性の感じ方の違いを
身を持って感じているようであった。

 温泉旅行の当日は、旅行用品以外は何も持たないで、薫は大将の自宅に行っ
ている。
俺は「薫が女に成るのは如何するのであろう」と思っていると、2階で千寿さ
んに着せ替えを手伝ってもらっているようである。
程なく2階から千寿さんと共に降りてきた薫を見て、俺も大将も驚いた。本当
にこれがあの薫なのかと疑わざるを得ないほどの変りようである。初めて化粧
をして、和服を着て階段を降りる姿は、誰が見ても女性であったからである。
それも、本当の年齢よりも数歳、いや3歳薫よりも年下の俺よりも如何見ても
3つは若く見えるのである。
化粧した女と云うものは凄いものだと、内心恐怖を覚えたほどである。
千寿さんと薫とで通りを並んで歩く姿は、美人妻を連れた俺たち2人にとって
も楽しいものであった。
 旅館では早速温泉を楽しんだ。薫も千寿さんと女風呂に行ったようだ。
「驚いたわ!薫さんの前のタックの部分を見たけれど女性そのものなんだもの
• ・・前だけではなく、身体全体の雰囲気も女性そのものなんだもの・・・」
風呂から上って部屋に帰って来た千寿さんは驚きながらも、薫の様子を話して
くれた。
風呂に入るために全裸になっても、薫は全く女性そのものであったらしい。
この1年の薫の変りようには俺も大将も、千寿さんも驚くばかりである。薫は
話を黙って聞いていて、ニコニコしている。俺はいい女を女房にしたものだと
ちょっと鼻が高かった。
 宿の食事の時間となって、女性陣は互いの亭主に酒のお酌をしてくれている。
亭主達もお互いの女房に酒を注いでやった。
酒を飲む前に、俺は大将の前の畳の上に正座をして、頭を下げたのだ。今まで
何から何までお世話になって来たお礼を述べている。
そして、大将にお願いしていた。
「厚かましいとは思いますが、大将の弟にしていただきたい」と申し入れて
いたのだ。
薫は元から大将のお気に入りの人間だったから、今では本当に何から何まで
お世話を焼いてもらっている。こんな年を食った娘はいないと思われるのだ
が、そんな感じで見守ってもらっている。
俺も大将にはいろいろと教えてもらって、やっと薫の亭主らしくなって来たん
じゃないかと思い始めた。これも大将のお陰だと感謝している。
大将は単なる唯の友達ではないと、今では思うようになった。まるで、身内と
言おうか、兄が弟を叱咤激励しているように思えていた。
薫は薫で、千寿さんよりも年上でありながら、千寿さんを姉かお母さんのよう
に慕っている。まるで甘えているようだ。
「どうか、この願いを聞いて欲しいのです・・・」
俺は真剣に大将に頼みこんでいた。【続く】
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