fc2ブログ

記事一覧

小説 舞の楽園 ( 私は薫 )


         「 薫 」(37)
  
大将の顔に喜びに表情が浮かんだ。
「孤独に生きて来た者同士が家族になることが出来るなんて・・・」
そして、声を詰まらせて言っている。
大将がそんなになるものだから、俺も女達も涙が出て来てしまっている。
 「もう1つお願いがあるのですが・・・」
俺は暖めていて誰にも言わなかったことを切り出した。
「後1年もすれば俺も会社を定年になるので、大将のいや、兄さんの店で弟子
として働かして欲しいのです」
「今の店では無理だが、何れは店を大きくしようと考えているんだ。その時は
その店には人手もいるだろうし、大きくする為には他の所に移れなければなら
ないだろうと思っている。その時には兄弟共に、又女房達にも手伝ってもらわ
なければならないだろうな・・・」
俺が頼み込むと、大将は将来のことを語っている。既に大将には俺のことを弟
として認めてくれている。大将も1つ目の俺の願いは兄弟と言う言葉で表現し
て承諾をしているし、2つ目のお願いにも将来のこととして了承したものだと
俺は思っている。
「あたしたちも、お店をお手伝いできるの・・・嬉しいわ」
女房どもも異口同音に手を取り合って喜んだのは言うまでもなかった。本来は
千寿さんも薫も男達のお店の手伝いをして、夫婦で助け合って行きたいのだと
俺は思った。大将いや兄さんもそう言う風に感じたのであろう、嬉しそう
だった。


   <千寿さんはお母さん>
 私は彼が、「大将をお兄さんと呼んで、将来はお店を手伝いたい」と言う話を
するものとは聞いてもいなかったし、思ってもいませんでしたので、とても嬉
しく感じました。
その前には私達には時間が足りなかったので、私には話せなかったのかも知れ
ません。彼の中では暖めていたのだと思います。
その彼が「亭主らしくなってきた・・・」と言ってくれた時には、私を女とし
て女房として思っていてくれるのだわ・・・と思い、とっても嬉しくなったの
です。
こんな私を女房として見てくれているのですもの・・・感謝感謝です。こんな
幸せはありません。
私は彼が愛してくれるこの肉体が女の肉体でないことに負い目を感じておりま
したが、今はもうそんなことを気にしなくなりました。そして、このように男
の身体を持った私を、私の心を愛して下さる彼を、私は本当に大切にしなけれ
ばならないと心を新たにしたのです。
千寿さんが私と会った一番最初の頃におっしゃった通り、彼はありのままの私
を受け入れて、なおかつ愛していてくれたのです。
 
旅館のお食事が始まりました。
とっても楽しい雰囲気の中で、夫達も酒が進んでいます。
私も夫にお酒を注がれたのですが、以前男だった時には家の人が飲むほどには
遠く及びませんが程々には飲めたと思っていましたが、ほどんとと言うより
全く飲めなくなっていたのです。【続く】
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

舞

Author:舞
FC2ブログへようこそ!