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小説 舞の楽園 ( 私は薫 )


        「 薫 」 (39)
   この1年お姉さんからいろいろなことを教わりましてご面倒をお掛けしたこと
 に対して、お詫びと感謝の言葉を言っていました。
 「もし・・お姉さんがおられなかったらば、このようなわたしを家の人はこれほど愛
 してはくれなかったでしょう・・・」とも言っています。
 お礼の言葉を申し上げている途中に急に涙が出て来まして止まらなくなってしまいま
 した。
 お姉さんも泣いているようです。優しく私の背中を撫ぜていてくれました。
 
   「本当にわたしを妹のように思って下さって、わたしはここまで女になることが
出来ましたわ。ありがとうございます」
暫くシャクリ上げて泣いていた私がやっと話が出来る状態になりましたので、以前は
男・男していた私をここまでにしていただいたことは、並大抵のことでは無かった筈
なのです。心からのお礼を申し上げました。
「そうね。お年こそ貴女の方が上なのですけれど、何処かとってもチャーミングなの
ですもの・・・可愛いと思っておりましたのよ・・」
千寿さんはおっしゃいます。
「誤解なさらないでね。貴女の旦那様が貴女を『可愛い・・』とおっしゃるような意味
 では無いのよ!そうよね・・・大げさに言うと・・・わたしに子供が出来てお嫁に行く
 って感じかな・・・ごめんなさいね。失礼な表現だったかしら・・・」
 「わたしの旦那様もそのような思いで貴方達を見ていましたわ・・・わたしは子供を
 産むことが出来ないでしょう?だから・・家の人も貴女を可愛い妹を育てている・・・
 と言った感じで見守っていたのですよ・・・」
 千寿さんはそう言って、感極まったのか大粒の涙を両の目から落としたのです。大切な
 娘をお嫁に出す母親のような気持だったのでしょう。

   「これからは遠くの街に嫁いで行かなければならないのですから、自分がしっかり
しなかればいけないのですよ」
そして最後には、母親のような口調で私をお嫁に出すような心境で心得を諭していまし
た。
女に生まれ変わった私にとっては、千寿さんはお姉さんではなくお母さんのように私を
見守って下さったのです。そして、大将もお兄さんではなくお父さんのような気持だっ
たのです。
そう言えば、思い当たる節だ多々あるのです。大将が私達を結び付けてくれたこと・・
なんです。そのことが1番最初に思い浮かんだのです。
千寿さんが何かに付け女の心得を優しく教えて下さったのも、姉としてではなく母と
して娘に教えてくれたのだと思いました。
私はそう気付くと恥も外聞も忘れて思わず「お母さん」と言って抱き付いてしまったの
です。それを聞いた千寿さんは感極まったのでしょう、先ほどの私のように大粒の涙を
流して泣き崩れてしまったのです。
大将が話していましたように、孤独の者達が本当に1つの家族になったことを実感とし
て受け入れていました。

 千寿さんは・・・いえ、今は1つの家族になったのですから、これからは「お母さん」
と呼んでもいいでしょう。
お母さんは「ありがとう。ありがとう」と繰り返し言ってくれていましたが、私の方こ
そ「ありがとうございます」と言いたいのです。
非常に嬉しくって2人して再度大泣きに泣いてしまいました。(続く)
      
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