fc2ブログ

記事一覧

小説 舞の楽園 ( 私は薫 )


        「 薫 」 (46)
   この街の繁華街の内に位置していて、そこには飲み屋とか料理店も多く、近くにはオフィ
 スビルもあるので、立地条件は良いと思われる。
 家の方も如何した具合か、2世帯住宅が見つかった。
 ただし、こちらは売り物件であった。『俺達が前に住んでいた都市に比べて非常に安い物件だ
 な』と思われた。そこで俺は手付金を打って置いた。
 手付金を打つ・・・と言うことは購入する意志がある・・と言うことだ。兄さんに見て貰って
 から決めたいと思ったのだ・・・。
 資金のことであるが、多分店の敷金や内装と器具の購入と当分の間の運転資金を考えて、俺の
退職金で十分おつりがくると考えられる。
新しい家は即金では到底むりだが、ローンを組めばなんとか支払うことが出来そうな金額で
あった。
姉さんと薫は既に厚生年金を受け取っているので、生活資金は考えなくとも済みそうなので、
十分資金は足りると見たのだ。お金の苦労はしなくても済みそうだった。

  店と家との契約を考えてから数日後、兄さん夫婦を迎えに行くことにした。一任と言うこ
とにはなってはいるが、やっぱり契約ともなると、兄さんの意見も聞かなければならない。
兄さんも、店と家とが意外と早く見つかったので驚いていた。
兄さん夫婦を迎えに行くのは、もう1つ理由があった。俺達の養子縁組を進めるために薫の話
を聞いてもらった弁護士さんに会うという理由があったのだ・・・。そして、そのことを話す
と兄さんはとても喜んでくれていた。
まず、弁護士事務所へ行った。
「俺達はこちらに滞在する時間が余りないので・・・」
「それでしたら・・・明日の午前中に書類をそろえて置きましょう」
弁護士は親切で気持ちの良い対応をしてくれた。
「お若い奥様ですね。羨ましいですよ・・・」
事務所を辞する時に、弁護士は俺に向かって薫の本当の年を知っているのに、小声で言って
いる。れは男と男の内緒話であり、本当に羨ましげであった。
俺は「いやぁ・・・」と頭を掻くより方法が無かった。

 それから、兄さん達の住む家へ行ったのだ。
「ただいま。お父さん。お母さん」
薫は玄関から家の中に向かって叫んでいた。
ところが出てきたのはお姉さん1人で、兄さんは早めに店へ行ったという。兄さんは店で
俺達を待っていてくれる積りらしい・・・
薫が「一刻も早くお父さんにお会いしたいわ」と言うものだから、姉さんも店に行くことに
なった。俺1人で皆を待っているというのも馬鹿らしいので、3人で店に行くことになった。
そろそろ、店には客が入る時間帯になっているので、今日に限ってお客も多いようだ。
「久し振りだなぁ・・・」
俺がカウンターに座っていると、顔馴染みいの客が俺に声を掛けてきた。それに対して隣に
座っている薫には知らん顔をしている。矢張り薫が昔の『山ちゃん』だとは判らないようで
ある。
「お連れの女性は・・・?」
もう1人の顔馴染みの客の人が、隣に座っている薫を指して尋ねて来た。
「わたしの女房です。結婚しましてね・・・」
「主人がいつもお世話になっております・・・」
俺が言うと、薫が立ち上がって礼の言葉を述べていた。父さんがニヤニヤとしていた。
兎に角薫は、いや昔の山ちゃんだとは判らないほど薫は変わっていたのだ。それほど女らし
くなってしまったようだ・・(続く)
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

舞

Author:舞
FC2ブログへようこそ!