「 薫 」 (48)
< 新しいお店とお家 >
翌朝1番で、弁護士さんのところに主人と2人で尋ねました。
昨日お頼みした書類に記名捺印をして、弁護士の先生に改めてお願いしてから、お父さん
• お母さんと共に私達の住んでいる街に向かいました。
温泉旅行以来の4人での旅でしたので、私はウキウキしておりました。お母さんも同様だ
ったようです。
お父さん・お母さんには狭いところですが我が家に泊まって頂きました。
「ちゃんとしているのね・・・」
両親は我が家に来るのは初めてです。お家の中が片付いているのを見たお母さんに褒めて
いただきました。
お父さんと主人は早速「夜の街を見に行く」と言っていますので、私達も夜の街へ繰り出
したのです。夜間でしたが不動産屋さんの方も出て来て頂いて、これから営業するであり
ましょうお店の中も見せて頂いたのです。
お父さんもこの物件が気に入ったようでした。
これは不動産屋さんと別れた後のお話ですが「明日にも賃貸契約を結ぼうか・・・?と
言っていました。
お母さんはお店のことは全てお父さんと主人にお任せでしたので、口出しはしません。私
もお父さんと主人が決めることなので、口を挟む余地はありません。主人とお父さんに
任せて置けば間違いはないと思って信頼しています。
「明日はお家の方も見たいわね・・・」
お店の方を全部見終わった処で、お母さんは言っています。
「じゃぁ・・・わたしの車で、迎えに来ますよ・・・」
不動産屋さんも快く、ご自分の自家用車で迎えに来てくれると言っております。時間な
ど定めて帰りました。
それから、私達にとっては新しいお店の近辺をブラブラと歩いて見ました。
女の私達にとっては散歩のようなものでしかありませんが、主人とお父さんにとっては
散歩などと云う生やさしいものでは無かったようです。
お店がどのような位置にあるのか?近くのオフィスの状況だったり、現在営業している
飲み屋や食事処の現状などとかを、自分の眼で注意深く観察をしているのです。
良く流行っているお店で食事を執ることにしました。
お父さんは1つ1つの食べ物に対して吟味するように味見をしております。値段は手頃
なのですが、プロのお父さんにとっては、いささか不満の残る味だったようです。
「この地方では、このような味付けが好まれているのかい・・・?」
お父さんは私の主人に対して小声で質問をしておりました。口調ももうプロの料理人
と云った感じで、頼もしい限りです。
「やはり今では、兄さんの専門とする関西風の味付けが好まれて来ているようです。し
かし・・・そう云うところは、この地方では割烹クラスの料亭に行かないと味合え無い
ようです・・・」
主人もまた小声ながら真剣に答えています。
そう言う主人を見ていて頼もしく感じて、私は惚れ直してしまいました。(続く)
スポンサーサイト