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小説 舞の楽園 ( オブジェ )


        オブジェ -1
(1) ワイン
 「来週の土曜日は妻の誕生日なのだ。妻は身体が動かせなくってね。ショパン
が好きなんだ。別荘へ来てショパンを弾いて貰えないだろうか?」
井森さんからの申し出を断る訳にはいかなかった。
大内一夫がアルバイトでピアノを弾いているレストランのオーナーからの紹介で
あったからである。
大内一夫は今年の3月、音大を卒業した女にしても可笑しくない程の愛嬌のある
顔を持った23歳の美青年であった。

 翌週の土曜日、夕方4時過ぎに北軽井沢の井森の別荘を訪れている。そこは、
唐松の林の中にある大きな別荘であった。
別荘の管理人だという美貴と名乗った30代前半と思われる女が、別荘の玄関に
は迎えていた。
美貴は化粧は濃いが、キリリとした感じがする何処か近寄り難い感じがしている。
美貴に案内されて、ホテルのロビー程もあろうかと思われる大きな天井の高い
部屋に通されている。
一夫は、この別荘も管理人だという美貴という女にも、一夫の想像とはかけ離れ
ていて何か違和感に近い物を覚えている。

 ほの暗い部屋の中では、中世ヨーロッパの物らしき燭台が置かれて、大きな
蝋燭が赤く揺れていてパーティの準備は整っていた。部屋の片隅にはグランドピ
アノが置かれていて、既に中央の食卓の上には豪華な料理が置かれていて、ワイ
ンも冷えている。

 井森と美貴、それに一夫の3人が席に着いた。
「取り合えず、妻のために乾杯だ!」
美貴が3人分のグラスにワインを注いだ。
そして、注射器を大きくしたようなガラスの筒に赤ワインを充填する。
蝋燭の炎にガラスの筒に詰められた赤いワインがキラリと光った。

「奥様は・・・・?」
ワイングラスを持ち上げながら一夫は訝しげに聞いている。
「もうきているよ・・」
井森が視線を送る。視線の先には、黒いビロードに包まれた物体があった。
肩も露な濃い紫のドレスに着替えた美貴が優雅な動作で立ち上がると、腰を大き
く振りながらそのビロードに近づき、その物体を載せてある滑車の付いた台を
部屋の中央に押してきた。

不思議そうに見守る一夫の目の前で、被せてあった黒いビロードの布が取り払わ
れた。
「あっ・・・」
「妻の雪枝だ」
それは全裸の女のオブジェであった。いや、黒い縄だけを纏ったオブジェであ
った。(続く)
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コメント

前回までの「部下の女になりました」が最後中途半端の形で終わったような?
今も、モヤモヤしています。

No title

 スミマセン。
間違えました。オブジェが終わったら続きを書きますので・・

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