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小説 舞の楽園 ( 台湾1周 )


         台 湾 1 周 - 26
   家の冷蔵庫には何も残っていないことを思い出したのです。台湾旅行の為に、全て
 処分したのです。
 「お買い物に行かなければならないわ・・」私の独り言です。
 『けれども・・お化粧がこんなに下手では、表に行けないわ・・・』私は悲しくなりま
 した。
 折角女になったのに、また男に戻ることは残念ですが、仕方がありません。また男の服
 を着るしかありません。
 折角着たのだからと、ブラの内側に入れました詰め物のソックスだけを取り去り、ブラ
 は着けたままにしています。パンティ先程無毛にしました小さなものを下向きにして履
 いていますので、ちょっと位置を直してそのままです。
 上に薄いブルーの半袖を着まして、スラックスを履いて姿見に映しますと下に着たブラ
 の線が見えるように感じて、薄い緑色のカーディガンを羽織ります。

  そして・・・お出掛けです。
 出掛けに階段の向かい側のお部屋のご老人の奥様に、「暫く留守をします・・」と言って
ありますので、台湾で唯一買ってきたお土産を渡します。
この団地は若い人が住んでいましたが、経年により今はお年寄りばかりです。
隣の住宅もご主人を亡くした70を1つか2つ超えていると思われる上品な奥様が独り
ですんでおられます。
この団地で私が知っているのは、この方ぐらいなものでした。

 近くにありますスーパーに行きまして、お肉やら野菜やらを買い出して来ます。今夜
は焼肉にする積りです。
妻の生きている時は、お料理など全くしなかったのですが、妻が死んで5年を過ぎます
と、家事とお料理はそこそこ出来るようになりました。今夜は彼の為に良い奥さんに
なる積りです。
家に帰ってまたお着換えをしまして、焼肉の支度をしまして、また再度のお化粧です。
今度は塗るお化粧品の量を意識をして減らし、何とか見られるようにはなりました。
鏡に映すと、頭だけが男のままです。妻はウィッグは持っていなかったようです。こ
の時ほど、『ウィッグが欲しいわ・・・』と思ったことはありません。
考えて見ると、妻の足のサイズも知りませんで、ヒールが入るかどうかも判りません
で、先程は外出しようとしていたのです。無謀でした。

  今度は如何にか見られるお化粧が出来ましたがまだまだです。お化粧をしました
私は台所に立っています。
買ってきたお肉と野菜を加えて軽く炒めていますと、玄関のチャイムがなりました。彼が
来たようです。
「ハァ~イ」
「俺だ・・・」
インターホーンを取り上げて返事をします。もう女の声です。彼の太い声が聞こえます。
男を引き込む女のようでちょっと恥ずかしい気がしましたが、玄関に通じる廊下に置い
てある鏡をチラリと見て玄関の扉を開きました。
男だった時には、そこの鏡なんか見たことが無かったのですが、もう女の心になってい
るようです。
「イラッシャイマセ・・・」
お隣に聞こえないように小さな声ですが、出来るだけ可愛い声で彼を迎え入れています。
「うむ。おじゃまするよ。これ・・・お土産だ・・・」
扉を開くと薄いブルーの作業衣姿の彼が手に紙袋を持って立っています。玄関に入って
貰って扉を閉めるやいなや、行き成り抱き竦められ先程ルージュを塗ったばかりの唇
を奪われました。
大柄な彼に抱き抱えられると、小柄な私は縋り付かなければなりません。女の姿で彼の
逞しい肩に両手を回している私を発見しますと、「本当に女に成って幸せだわ・・・」と
思えてくるのです。

 「ご飯はまだでしょう・・・?。お肉を焼いて置いたわ・・・」
玄関での激しいキッスによって塗った紅が彼のお顔に付いてしまったのをティシュで拭
き取ってから、急いでルージュを塗り直してから、彼に食卓に座って貰いました。
このセリフも1度は言って見たかったのです。
ご飯を盛って、お味噌汁を注いで、本当に奥さんになった気持ちです。
「イタダキマス」
「お代わりをして下さいね・・・」
「旨い!本当に流子が作ったのかい・・・?」
冗談だと思いますが、彼は言いながら全部を平らげてくれていました。60を超えて痩
せようとしている私とは違って、彼は大柄でお仕事も無さっているのだけあって、沢山
食べられるようです。(つづく)



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