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小説 舞の楽園 ( したたかな女 )

       「 したたかな女 」(10) 
 考えた末に、お断りして謝るしか方法は無かったのです。そして、断りのメ
―ルを入れたのです。
「貴男の想う私はバーチャルの世界に住む者で、本当の私は男なんです。騙し
たりして済まないことをしました。どうぞお忘れ下さい」と書いて送ったので
す。しかし彼は何かの誤りか、「如何しても会いたい」と、言って譲りません。
「勘弁して欲しい。今までのことは許して下さい」と送ったのですが何を考え
ているのか、聞き入れて貰えずに切々と私への想いを書いて送ってくるのです。
とうとう絆されるように会うことを承諾してしまったのです。元はと言えば、
私が彼を騙した悪いことをしたと言う思いがあったのです。
こうなれば、素の自分で彼に会って話をするしか方法は無いと思ったのです。
だから彼に会うにしても、女装などは勿論のこと女性の言葉使いはせずに、い
つもの自分で会おうと思ったのです。
「断られれば断られたときのことだ」と腹を括ったのです。いやきっと、断ら
れるに違いないと確信していました。

   <4>男同士
 とうとう、私の気が重い彼と待ち合わせの日がやって来ました。彼の泊まっ
ているホテルに私が出向いたのです。
もち論、先に決心したとおり男としてホテルのロビーで彼に会いました。
初対面の挨拶をして直ぐに、私はバーチャルの世界とは言え女言葉で女の真似
をしたことを素直に詫びたのです。
何故であるか不明でしたが、彼は私に会えたことをとても喜んでくれたのです。
そして、色々と話をしだしたのです。氏名に名刺をくれて素性を明らかにして
くれたのです。彼が本気ならば私も本名を明かさない訳にはいきません。私も
本名を明かして、年齢も偽っていたことを詫びたのです。
 彼の本名は三木隆といいまして、奥様を先に亡くしているようでした。彼の
地元は福井県で、地元では結構名の知れた食品製造の会社の社長なのです。
彼の会社はそれなりの利益は上げているようですが、「需要は頭打ちなのです」
と話しておりました。
以前私が勤めていた商社でもそのような製品を扱っていたことを思い出しなが
ら彼の話すのを聞いていました。
そのロビーでは、私はただ彼の話を聞いているだけだったのです。
彼は余程私を気に入ったようなのです。そして、余程リラクッスしたかったの
だと思うのです。
ちょうど昼食時でしたので、昼食に誘われてお酒を飲みながら食事をご馳走に
なりました。
「ああ、楽しかった。もっとお話をしたいですね!先程の話の続きもしたいで
すし・・・私の部屋にいらっしゃいませんか?」
彼はそう言って誘って来たのです。
私は「久し振りに商社に勤めていた当時の現役に戻って、仕事の話をするのも
悪くないかも・・・」と思って承諾して、彼の部屋におじゃまをしたのです。

私も男として誠実な彼を気に入っておりましたし、彼との出会いについては
騙していたと言う自負もありましたので、彼が気分良くしゃべっているのに
帰る理由は見つからないのです。(続く)
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