小説 舞の楽園 ( トルコ10日間 )
- 2019/03/28
- 23:56
トルコ 10日間 < 42 >
帰ってきました翌日に、高士さんから電話がありました。
「万子。疲れは取れたかい・・・?」
電話の向こうで、ニヤニヤと笑っている彼の顔が目に浮かぶような言い方です。
「店の者に万子を紹介したい。俺の嫁さんになるんだ!・・・と言ってな」
と言うのです。
「待って下さい・・・」
私は焦ってしまいました。高士さんのお嫁さんになるならば、男の姿では行く
訳には行きません。
「だって・・・お化粧もしたことがないのですもの・・・わたしが男だと
解ったら・・・あなたが恥を掻くわ・・・」
確かにトルコ旅行の後半は顔に白粉を叩き、唇にはルージュを塗ってお床入り
をしましたが、それはお部屋の中で彼の前だけです。昼間明るいところで他の
人が見れば、男であることは明白です。
「お嫁に行く」と彼に約束はしましたが、それも戯れか、実際に行はれ無いも
のだと思っていました。仮に本当のことだとしましても、もっとず~っと後の
ことだと考えていました。こんなに急にだとは思ってもいません。
「それじゃぁ・・・2日をやろう!明後日に迎えに行く。それまでにお化粧
を勉強して、完璧な女になっているんだ!」
彼は命令しています。彼の厳命です。
「はい!解りましたわ・・・」
私は心を決めて答えています。「もう、待てないんだ」彼は申していました。
待ちきれないのは、実は私も一緒でした。このツアーの10日間で、毎晩、精力
の強い彼に開発された私の肉体は、彼の男根が忘れられないのです。
オ〇ンコにされた、最初のうちはあんなに痛かったアヌスが疼いて疼いて眠る
ことさえ出来ないのです。
世間一般から見れば、60を超えた私はもう老人ですよね。
幾ら白い駆をしていると言っても、女装をして(いえ、完全に女になろうとして
いるのです)までもお嫁に行こうとしているのです。
恋は盲目と云うじゃありませんか。私は高士さんに恋をしてしまったのです。女
にされて私は女として、強い男の高士さんに恋をしてしまったのです。一生に一
度の恋なのです。
私は盲目になってしまったのかも知れません。今まで築いてきた男としての人生
を捨ててまで、女として生きて行こうと思っているのですから・・・
今からお化粧のお勉強をしなければなりません。何度も何度も繰り返してお化粧
をしたならば、明後日までには何とか見られるようになることでしょう・・・
幸いにして、亡くなった女房の残してくれたお化粧品も、女の衣装もそのまま箪笥
に残されているのです。ちょっとキツイかもしれませんが、背丈は同じでしたから
着れないことは無いと思います。
兎に角、明後日には高士さんがお迎えにくるのです。私は急いでシャワーを浴びて
女の衣装を身に着けてお化粧を始める積もりになっています。
この恋が失敗のか、成功するのかは神様だけが知っている筈です。しかし、こうな
ったならば精一杯頑張って生きる以外はないのです。( 完 )
スポンサーサイト