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小説 舞の楽園 ( トルコ10日間 )

   
         トルコ 10日間   < 42 >
  帰ってきました翌日に、高士さんから電話がありました。
 「万子。疲れは取れたかい・・・?」
 電話の向こうで、ニヤニヤと笑っている彼の顔が目に浮かぶような言い方です。
 「店の者に万子を紹介したい。俺の嫁さんになるんだ!・・・と言ってな」
 と言うのです。
 「待って下さい・・・」
 私は焦ってしまいました。高士さんのお嫁さんになるならば、男の姿では行く
 訳には行きません。
 「だって・・・お化粧もしたことがないのですもの・・・わたしが男だと
 解ったら・・・あなたが恥を掻くわ・・・」
 確かにトルコ旅行の後半は顔に白粉を叩き、唇にはルージュを塗ってお床入り
 をしましたが、それはお部屋の中で彼の前だけです。昼間明るいところで他の
 人が見れば、男であることは明白です。
 「お嫁に行く」と彼に約束はしましたが、それも戯れか、実際に行はれ無いも
 のだと思っていました。仮に本当のことだとしましても、もっとず~っと後の
 ことだと考えていました。こんなに急にだとは思ってもいません。
 
  「それじゃぁ・・・2日をやろう!明後日に迎えに行く。それまでにお化粧
 を勉強して、完璧な女になっているんだ!」
 彼は命令しています。彼の厳命です。
 「はい!解りましたわ・・・」
 私は心を決めて答えています。「もう、待てないんだ」彼は申していました。
 待ちきれないのは、実は私も一緒でした。このツアーの10日間で、毎晩、精力
 の強い彼に開発された私の肉体は、彼の男根が忘れられないのです。
 オ〇ンコにされた、最初のうちはあんなに痛かったアヌスが疼いて疼いて眠る
 ことさえ出来ないのです。

  世間一般から見れば、60を超えた私はもう老人ですよね。
 幾ら白い駆をしていると言っても、女装をして(いえ、完全に女になろうとして
 いるのです)までもお嫁に行こうとしているのです。
 恋は盲目と云うじゃありませんか。私は高士さんに恋をしてしまったのです。女
 にされて私は女として、強い男の高士さんに恋をしてしまったのです。一生に一
 度の恋なのです。
 私は盲目になってしまったのかも知れません。今まで築いてきた男としての人生
 を捨ててまで、女として生きて行こうと思っているのですから・・・

  今からお化粧のお勉強をしなければなりません。何度も何度も繰り返してお化粧
 をしたならば、明後日までには何とか見られるようになることでしょう・・・
 幸いにして、亡くなった女房の残してくれたお化粧品も、女の衣装もそのまま箪笥
 に残されているのです。ちょっとキツイかもしれませんが、背丈は同じでしたから
 着れないことは無いと思います。
 兎に角、明後日には高士さんがお迎えにくるのです。私は急いでシャワーを浴びて
 女の衣装を身に着けてお化粧を始める積もりになっています。
 この恋が失敗のか、成功するのかは神様だけが知っている筈です。しかし、こうな
 ったならば精一杯頑張って生きる以外はないのです。( 完 )



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Author:舞
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