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小説 舞の楽園 ( 熟れた男達 )

   
         熟れた男達  < 12 >
   “ガラッと音がっして話声が聞こえて来た。脱衣所に人が来たようだ。
 「シーッ・・人が来たぞ・・」
 俺は躯を離して、呆けているような睦子の口元を手で塞いで置いて黙らせてから、ザブン
 と浴槽に飛び込んだ。
 危ういところではあったと思うが、見られてはいないと思っている。
 睦子はと見ると、白い躯を流して、彼等が入って来た時には大きな浴槽の縁にソーッと浸
 っていた。

  部屋に戻るとストリップを見に行っていた2人の同僚が帰っていた。
その夜は残念だったが、何もせずに寝たのだ。そりゃぁ・・もう1回ぐらいは俺のオンナ
にしたことを、念を押しときたかったさ・・


          { 4 }
帰りのバスの中で睦子の隣に座った俺は早速睦子の身上調査だ。皆は夕べの疲れか寝
ている。
聞くと、睦子は連れ合いは居ないと言うことである。元々結婚をしなかったらしい・・
今は親戚の家に同居をしている・・と笑いながら言っていた。
しかし、勤め始めたので「家を出てくれ・・」と言われているとのことである。
顔は笑っているが、目は笑っていなかった。寂しそうな翳りがあった。
俺はそれを見て、この睦子の・・と云うよりもお爺さんの老後を階間見たような気がし
ている。
『俺もそう言う風になるのかな・・』と思っていた。
同じ境遇の彼女が心底可哀想になっている。

 「何処に・・住んでいるんだい・・?」
聞くと、割と近くに住んでいる。俺の住んでいる街の隣街である。
「今日は、俺の車に乗って帰るか・・?送って行ってやるよ・・」
「えっ・・いいのですか?実は私の帰るバスは日曜日は運休なもので・・。1時間半
近く時間を潰さなくては・・と思っていたのですよ・・」
嬉しそうに言っているではないか・・
俺は下心があっての誘いではなかったが、兎に角俺の車に乗せることに成功したのだ
・ ・

俺のセリカは彼女を乗せて走り出した。
 「どうだ!俺の家へ来ない・・か?俺はチョンガ―で、汚い所だが・・歓待するぞ!」
 助手席にチョコンと座って前を見ている睦子に向って、俺はもう俺のオンナに対する
 口調で尊大に言っていた。もう、1度姦したのだから犯したいと言う下心を隠す積り
 は無かった。
 「いいのですか・・?お邪魔しても・・?」
 膝の上に置いた小さなポーチを握り締めながら、睦子は白い貌を紅に染めて言ってい
 る。
 彼女も夕べのことは物足りない・・と思っているようだ。
 彼女も姦られ足り無いのだ・・と思って俺はニヤリとして、ハンドルを離した左手で、
彼女の膝に置いたポーチの下に潜り込ませていたんだ・・

  俺の家は両親が残してくれた2階屋だ。築50年も経ている。庭も無い。
 父親は8年前に亡くなった。母親は今は兄と共に田舎の方で暮らしていて、現在は俺
 1人である。
 1階は玄関にやや広めの台所兼食堂と風呂場と便所。2階は俺の寝室と他は物置代わ
 りになっている6帖2部屋だ。
 「コーヒーでも・・飲むか・・?」
 「あっ・・わたしが・・淹れる・・わ」
 散らかしぱなしに散らかっている食卓の上を片付けながら(・・と云うよりも、向
 こう側に押しやる・・と言った方がいいか・・)聞くと、彼女はそう答えてヤカンに
 水を入れている。もうスッカリと女言葉である。
 俺のオンナになったのだから、当然と言えば当然だと・・俺も睦子も思っている。
 「コーヒーは何処かしら・・?」と聞いて来た。
(つづく)
 

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