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小説 舞の楽園 ( 私の旦那様は弟の親友 )


          私の旦那様は弟の親友  ( 8 )  
   扉を開いた私が見たものは、弟くらいのジーパンとTシャツだけの若い男性だったのです。
 何時もの訪問販売に人とは違う格好の人でした。
 しかし、見た瞬間に『何処かで見たことがあるわ・・』と思ったのです。そして・・ハッと
 気付いたのです。
 「あっ・・早瀬君・・」と思わず口走ってしまったのです。

  敬様はフルネームは「早瀬敬・・タカシ」と申します。
 敬様は「北原」と表札の出ている部屋のチャイムを押したのですが、「は~い」と女の子の声
 で返事が返って来ましたので、もう1度表札を見てしまったのです。
 その時に・・私が覗きレンズを覗いてしまったようで、顔は確認出来ませんでした。
 そして・・女の人が扉を開けたのですから、もう・・敬様は驚いておりました。
 貴広の兄貴はまだ結婚してはいないと認識をしていたのに、女の人が出て来ましたので驚愕は
 当然だったと思われます。

  「早瀬君・・」
 その出て来た女の人の口からは、驚きの声が発せられたのです。
 敬様は私の顔を穴が空くほど、いえ、眸を見詰めています。人間と云うものは幾ら髪の形を
 変えて、顔をお化粧しても眸だけは変えられないものです。
 「お兄さん・・」
 敬様は呟いたのです。勿論、目を丸くしてです。
 私は「シマッタ・・」と後悔していていましたが、もう如何しようも無かったのです。その
 言葉を聞いた途端に、私は頭が真っ白になってしまって、開いた玄関扉を閉めようとしてい
 ました。敬様の前から逃げようとしていたのです。
 今では「如何して玄関扉を確認もしないで、開いたのだろう・・・」と後悔で一杯です。

  「イヤァ~・・帰って・・!」
 突然の出来事で錯乱した私は大きな女声の悲鳴を上げて、開いたドアーを慌てて閉じようと
 しました。
 ところが・・ドアーは閉まりませんでした。敬様のスニーカーを履いた足先が、閉じようと
 している扉を止めていたのです。
「オット・・それは・・無いだろう・・?折角持って来て上げたのに・・・」
 私の仕草にムッとしたのでしょう、敬様の尖った声が聞こえまして、扉が大きく開いてしま
 いました。敬様の逞しい腕がノブを捕まえて、扉を大きく開いていました。

  「イヤア~ァ。何をするの・・・!」
 女の恰好をしてミニのスカートの生足にサンダルを突っかけただけの私は、スチールの扉に
 捕まったままヨロケまして、外に飛び出していました。
 流石は男の方です。敬様はヨロケ出た私をブラウスの上から背中を押さえて下さったのです。
 しかし・・パニックっている私は思わずそんな悲鳴を上げていたのです。
 無論、女の悲鳴です。(つづく)
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