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小説 舞の楽園 ( 私の旦那様は弟の親友 )


          私の旦那様は弟の親友  ( 26 ) 
   従業員用の扉を潜りますと、そこだけ明かりの灯ったカウンターの中で、半袖のスーツ
 を着た福与かな女の人が料理を作っている手を止めて、私達を迎えてくれました。
 その方が敬様のお母様でした。
「あらっ・・いらっしゃい!綺麗な方ね・・・」
「失礼します・・」と入って行くと、大きな明るい声で迎えてくれました。
「僕の彼女・・北原理枝さん・・だ!・・・僕のお袋・・!」
 お店の中のボックス席へ案内されて座ると、彼がお母様に緊張してガチガチになっている
 私を紹介してくれました。
 彼が何処まで、どの程度まで、お母様に話してあるのか・・判りませんでしたので、私は
 心配なのですが、彼に話を合わせるしか・・無いようです。
 彼は自分のことを、ちっとも話してはくれないのです。
 
  「ちょっと・・お待ちになって・・ね」
 紹介されたお母様は再び立ち上がりまして、彼を呼んで料理を私の前のテーブルに並べ
 ています。
 3つのコップにシェリー酒を注いでから、私の前に座ったのです。
 「わたし・・10年ほど前に・・・理枝さんにお会いしていますのよ・・」
 ボックスのソファーに浅く腰を降ろしたお母様は、行き成りそう申しました。
 言葉の調子や表情も変わりが無かったのですが、私は驚いてしまいました。
 私がお母様にお会いした10年ほど前でと・・言うと、まだ私が本格的な女装を始める
 前のことです。お母様は私が男だと云うことをご存じだと・・言うことです。

  「お袋。僕は結婚しようと思っているんだ・・!どこかの教会で・・でも、式を挙げ
 ようと思っているんだ・・・」
 今度は敬様の言葉に、驚いてしまいました。
 まさか・・男性である私と・・彼がそこまで考えていた・・なんて、思わなかったので
 す。
 ハッと敬様を見詰めた私の眸に、うれし涙が溢れて来ていました。
 「そう・・いいんじゃないの・・あなたの人生だもの・・わたしは何にも云わないわ。
 理枝さん。ふつつかな息子ですが・・・宜しくお願いします・・・」
 お母様は至極アッケラカンとして言って、私に向って頭を下げるのです。
 流石は銀座でお店を構えている女傑と言う感じです。

  「お袋。ありがとう・・。お袋ならそう言うと思った・・よ」
 お2人の掛け合い見たいな言葉のやり取りを聞いていまして、私は焦ってしまいまし
 た。
 「お母様。今は理枝と名乗って、敬様のオンナですが・・わたしはご近所に住んでい
 ました北原理人と言います男でございます・・」
 焦った私はお母様に白状していました。『いいかげんなことではダメなんだわ。本当
 のことを言わなければ・・・』と思ったのです。(つづく)

 
 

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