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小説 舞の楽園 ( 私の旦那様は弟の親友 )


          私の旦那様は弟の親友  ( 28 )
   「あなたのお父さんのお店へお蕎麦を食べに行ったのよ・・。その時に理佐子先輩と
 喫茶店に入りお話をしたの・・」
 「 その時に『理佐子先輩のところは、貴ちゃんの上はお姉ちゃん2人だったっけ・・』
 と聞いたのよ・・」
 「『ううん。下は男よ・・!理人のことね・・。だけど・・理人は・・ちっとも家に寄り付
 かないし・・・あの子のことは・・・諦めているのよ』と言っていたわ・・。あたしは
 もう・・何も言えなかった・・・わ」
 「理枝さん。女になるのもいい・・とわたしは思うけど・・ご両親に心配掛けちゃダメ!
 ご両親に会って・・ちゃんとお話しをしなさい・・!」
 タバコを灰皿に押し付けて組んでいた脚を下ろして、お母様は姿勢を正して私におっしゃ
 いました。

  『確かに・・・そうだわ・・』と私は眼が覚めた思いです。
 今まで、自分の快楽だけの為に生きて来まして、両親のことは考えてもいなかったのです。
 「ご両親の許可を得てから・・結婚のことを考えても・・遅くはないわ・・・」
 「今はね・・男と女の境目だって、不確かなものになっている見たいだから・・そうね。
 理枝さんのご両親だって・・認めてくれるのじゃないかな・・・」
 お母様は砕けた口調で言うとニッコリと笑っています。
 「はい・・・判りました・・。両親に会って・・キチンと女になったことを報告します
・ ・わ」と私は答えていました。

「さあ、話は終わった・・わ。今日はゆっくりしてもいいのでしょう・・?」
 お母様は今までのお話を切り上げるようにあっしゃって、料理を勧めてくれています。
 「お袋。ご心配をおかけしてスイマセンデシタ!」
 「ところで理枝さんにプレゼントがあるのだ・・!指輪なんだ・・!婚約指輪の積りな
 のでけど、受け取ってくれる・・ね」
 敬様はお母様に頭を下げてから、私の方に向き直り、ズボンのポケットから小さな箱を取
り出しました。
 「あんまり・・高くはないんだ・・!何しろバイトの給料が安いので・・でも、貰って
 くれる・・ね」
 1昨日、彼のバイトの初お給料が出たらしいのです。その2/3近くをつぎ込んで私の為
 に指輪を買って来て下さったのです。 
 「嬉しい・・わ。空けてもいいですか・・?」
 今日は嬉し涙がでることばかりです。私は女になってから、涙腺が緩んでしまったので
 しょうか・・・?
 小さなその箱の包装を解くとビロードの小箱が現れました。その箱を開けると、台がシ
ルバーで1粒のダイヤの付いたリングが現れたのです。
「ありがとうゴザイマス。・・本当に素敵だわ・・」
泣きながらお礼を言って、左手の薬指に嵌めた指輪を電灯に透かして見ると、キラキラ
と幾つもの光が涙に濡れた眸に光っていました。


      < 家族への報告 >
  翌日、実家のお蕎麦屋さんが連休中はお休みしていることを知った私は、姉に連絡
の上、実家に帰りました。
昨日着ていた空色のスーツで、女として初めて両親の元へ行ったのです。無論、敬様も
一緒です。
「1人で両親に会って話して来るわ・・」と言ったのですが、「お前だけに恥ずかしい
想いをさせる訳にはいかない・・!」と敬様は何か期するところがあるようなのです。
無論。私の左の薬指にはダイヤの婚約指輪が光っていました。

 「こんにちは・・」
2人して入って行くと、私の女装を知っている姉が迎えてくれました。後から弟も顔を
だしています。
「綺麗になったわ・・ね」
姉の最初の言葉です。弟は私が余りにも美しいからか、非常に驚いた顔をして、何も言
いませんでした。私は女になった自分を見て貰おう・・と決心していました。

 「おっ・・敬。如何して・・ここに・・?」
私の後ろにいる敬様に気が付いた弟が、同級生で親友である敬様を見て叫びました。
弟は私が女装していることは薄々気が付いていたのでしょう・・そのこと自体にはさし
て驚かなかったようですが、敬様と婚約までしたことについては知らなかったのです。
最も、これから家族にはお話をして、出来れば了解を貰いたいのです。(つづく)




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