小説 舞の楽園 ( 私の旦那様は弟の親友 )
- 2019/06/15
- 02:42
私の旦那様は弟の親友 ( 33 )
今までお勤めしていた会社を、私は辞めることにしました。
「北原さんの家に行って来たよ・・理枝がオンナになっていることと、僕との婚約を認め
て貰った・・よ」
5月の連休が終わった最後の日に、敬様がお母様に連絡したのです。
もうその頃には、敬様は私のマンションで生活をしておりまして、お母様には会わなくな
っていたのです。
その時のお話ですが、世間話のついでにお母様が「お店の子が2人も辞めてしまって大変
なのよ・・」とおっしゃったのです。
「理枝を・・雇ってくれないか・・・」
敬様は、私が完女になって、会社に行くことを渋っているのを知っていましたから、冗談
に紛れて申したらしいのです。
これは・・後で敬様から聞いた話なのです。
「そう・・?。それなら・・・助かる・・わ。今はこういうご時世でしょう・・?なかな
か言い娘がいないのよ・・・。困っているのよ・・」
1度しかお会いしていない私を、お母様は男だとは思っていないようです。
女装をしさえすれば、完全な女として通用すると考えたようなのです。
「理枝。ちょっと・・ここへ・・お座り・・」
その夜、夕食を食べ終わった後に、茶碗を洗っている私を自分の前に座らせて敬様がおっ
しゃいました。
私に対する言葉も態度も、もう完全に男がオンナに対するものでした。
「理枝。お袋の店を手伝ってはくれまいか・・?女の娘が2人も辞めてしまうらしいの
だ・・。お袋が困っているらしい・・のだ」
敬様は考えたのでしょう・・決して・・明るい声ではありませんでした。
「俺はお前を水商売には出したくはない・・・と思っている。けれども・・今の時代。
理枝が男としても、女としても就職するのは難しいと考えているんだ・・。それだった
らば・・完全な女としてお袋の店を手伝ってくれまいか・・・?」
敬様は今まで考えていたことを私に打ち明けました。
幾ら服装が自由でと言っても、今のアパレルメーカーの会社には、男性として勤務
することには、私は苦痛を覚えていたのです。
それに・・何かと言うと・・課長には文句を言われます。もう・・限界だと思っていま
した。
再就職先を探そうと思っているところですが。男性では無くなった私を雇ってくれそう
なところは、皆無なのを感じていました。
たとえ・・あったにしても、今の私のお給料よりも大幅にダウンすることは必至です。
私は「敬様が大学を卒業するまでは、何としても敬様を養って差し上げたい・・・」
と思って頑張ってきました。
まだ、敬様のバイトのお給料だけでは、生活が不安なのです。
けれども・・幾ら完璧に女になったにしても、身体を弄っていない私が銀座の酒場の
女を演じられることが出来るのでしょうか・・・不安です。
お客様に下半身を触られるかも知れません。
しかし・・敬様は良しとしましても、お母様は私を女性として見てくれるのかしら・・
後、5年もしたらば、私は女として敬様と結婚をしたいのです。身体も弄りたいのです
が、それにはお金が必要なのです。
敬様もお母様のお店にお勤めすることを勧めて下さるので、私は心を動かされました。
大前提は・・「敬様のおっしゃるとおりのオンナ」なのです。
< 会社を辞めて・・ 。
銀座で働くために、私は今お勤めしている会社を辞めることにいたしました。
だいたい。夜は女になっている私は、もう男姿で会社に行くことは精神的にも無理なの
です。
5月の中旬の月曜日の朝。私は辞職願をハンドバックに入れて家を出ました。
「会社を辞めるなら・・キチンと辞めて来い・・」敬様に言われたのです。
その日はバッチリとお化粧を決めて、女物のワンピースを着まして、女性の姿で課長
に辞職願を出しに行ったのです。私はカミングアウトを会社の皆にもしようと、心に決
めたのです。(つづく)
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