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小説 舞の楽園 ( 私の旦那様は弟の親友 )


          私の旦那様は弟の親友  ( 34 ) 
   私の会社は男性が10名で、女性が20数名です。
 月曜日の朝は全員が揃って、打ち合わせと連絡事項の伝達があるのです。私達はこれを
 「朝会」と呼んでおりました。
 その朝会に私は出席したのです
 会社の皆は驚いたようです。でも・・もう既に何人かの女性達は『わたしが女装をして
 いるのではないか・・・』と思っていたようです。でも・・まさか・・完全に女装をして
 会社に出て来ようとは思っても見なかったようです。

  朝会が始まると、私はコツコツとハイヒールの音を響かせて、課長の席に近づきました。
 私は決して有能な社員ではありませんでしたので、私が辞めても仕事に支障をきたすこと
 にはならないはずです。
 書類を見ている課長は、近づいて来る私を見上げまして、『誰なんだ・・・?』と云う顔
 をしました。
 社員の大半の人が、課長席に近づいた私を見詰めておりました。
 「課長さん。お早うございます・・」
 思い切りの女声で、ニッコリと笑って私は挨拶をしました。そして、怪訝な顔をしている
 課長を見て「北原勇人です・・よう・・」と言いました。

  「オッ・・北原君じゃない・・か・・?どうしたのかね・・・?その格好は・・・?」
 私をやっと気づいてくれたようです。
 普段から私の仕事に不平ばかり言っていた50代半ばの後頭部の禿げ上がった課長は裏返
 ったような声を出しています。
 その声に又、社員の何人かがこちらを見ております。
 「いい女だ・・と思ったら、あれは・・北原君じゃないか・・・?」と言う男性社員の声
 も聞こえて来ます。私は言った彼の方をチラッと見てから、又ニッコリと笑い頭を下げま
 した。
 その時の私の服装は、黒の半袖のワンピースで白い腕を出しています。ワンピースは膝上
 10cmぐらいです。
 下は濃いベージュのパンティストッキングを履いておりまして、ヒールの高さが3cm程
 の黒のハイヒールを履いています。首にはパールのネックレスを着けていました。

  完璧な女の姿で課長の前に立った私はハンドバックを開けて中から辞表を取り出して、
 机の上に置きました。
「何だ・・・これは・・・?」
「退職願い・・です。宜しくお願いいたします・・」
 驚いている課長の問いに、退職の意思表示をしました。思えば、この課長には随分イビら
 れたものです。
 まあ・・鈍な私も悪いのですが、課長も私をイビルことを趣味見たいにしていたのです。
「退職願・・!辞める・・のか・・?」
 予想もしていなかったのでしょう、課長の声が裏返って震えていました。
 この嫌味な課長に辞表を出すことを、実際に夢見ておりましたから爽快な気分です。
「宜しくお願いいたします・・・わ」
 皆の居る方を向いてニッコリと笑ってワザと女らしく品を作って言うと、その場を離れ
 ました。
 後は皆さんで、私のことをどの様に噂をしたかは知りません。総務と経理の女性社員が
 宜しく取り計らってくれたようです。事実、その月の働いたお給料と退職金が僅かばか
 りですが振り込まれておりましたから・・
 私はこうして・・女になったことを、カミングアウトしたのです。(つづく)

  
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