小説 舞の楽園 ( 私の旦那様は弟の親友 )
- 2019/06/17
- 00:41
私の旦那様は弟の親友 ( 35 )
< お母様のお店 >
会社の人に衝撃的とも思えるようなカミングアウトをした私は爽快な気分でした。その
足で銀座にあるお母様のお店に行ったのです。
「会社を辞めましてから、そちらのお店へ参ります。11時半には行くことが出来ると思い
ます・・わ・・」
お母様にはそう連絡をお入れしてあったのです。お母様は待っていてくれました。
本来。お母様のお店に出ます時間は2時だそうで・・私は謝っております。
「まだ・・早いからお食事に行きましょう・・よ」
お母様はおっしゃって、ご一緒にレストランに入りました。予約を入れてありましたようで
す。
「敬は・・・どうしている・・の?」
お母様は敬様のことは心配していない顔をしていますが、やはり心配なのでしょう・・座る
なり聞いてまいりました。
敬様が逞しくなりまして、私の両親にも負けないで私を貰って下さった・・ことをお話いた
しますと、「敬も・・やるわね・・!」と笑っています。
私は小心者ですが、こう云う風に豪快なお母様に憧れて、なおかつ好きになってしまいまし
た。
実家での敬様と両親のやり取りや、今日の会社での課長のことなど、昼食を頂きながらい
ろいろとお話しました。
「わたくし・・お店のお仕事をして行けるかしら・・・?」
心細くって、1番心配なことをお母様に打ち明けています。
「うちのお店には・・ね。どんなに酔ったお客様でもホステスの胸を揉んだり、スカートの
中に手を入れたりするようなお客様はいない・・わ!それは・・酔った振りをして、ドレス
の上から胸にタッチをする一見さんも偶にはいるけれど・・・そう云うお客は2度と来ない
ようにしているの・・よ」
お母様は厳しい顔をしておっしゃると・・また直ぐにニッコリと笑いました。
「あなたも・・男に早く慣れることね・・・」と付け加えました。
もう・・私は不安で耐りません。
私は本当に男性は敬様しか知りません。今でこそこうして女装をしましてお外へ出るように
なりましたが、1年程前までは室内女装がほどんとでした・・
「理枝さん。あなたを息子の敬の許嫁として、お店の皆には紹介するわ・・よ。お店の会計
や経理事務を手伝って欲しい・・のよ・・。だから・・身体に触れられたり・・すること
は・・・ないわよ!・・・心配したでしょう・・・?」
お母様は私があらぬことを想像して、心配しているのを知っていらして・・ちょっと意地悪
をしたようです。ニッコリと言うより・・艶やかに笑って、私の心配をかき消して下さった
のです。
「お母様の意地悪・・・!わたくし・・本当に・・心配でしたのよ・・」
『こう云うところは敬様に・・いえ、お母様が敬様に似ているのでは無くて・・敬様がお母
様ににていらっしゃるのだわ・・と、思いながらも私は安心しました。
お母様を軽く睨んでいます。けれども・・お母様と私の2人の間はグッと近くなったような
気がしていました。(つづく)
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