小説 舞の楽園 ( 私の旦那様は弟の親友 )
- 2019/07/04
- 00:46
私の旦那様は弟の親友 ( 52 )
< 敬様の告白 >
その年はもう1つ、私にとってはショッキングな出来事がありました。
敬様のお母様のお店は、お盆の1週間はお休みなのです。
敬様の塾の方も休講になっております。「何処かへ・・旅行でも行かないか・・?」と
敬様が言い出したのです。
早速、彼がパソコンで旅館の手配をしてくれまして、旅行の日程等は彼に全部お任せす
ることにいたしました。お盆のお休みに旅行すると云うことで、車で行くと渋滞すると
思いまして、電車で行くことに決まりました。
何時もは忙しい敬様がそんなことを言い出して、旅館の手続き等もしてくれましたので、
私は大はしゃぎでした。
勿論、その日から旅行に行く前日までは、何時もに増して彼に大サービスです。
当日、東京駅に行きますと、バックを肩にした弟の貴広が私達を待っていたのです。
「あらっ・・貴広。どうしたの・・・?」
「僕も連れて行って・・よ」
彼はシャーシャーと答えています。敬様の方を見ますと、「貴広も連れて行ってやれ・・
よ」と言うように頷いていました。
貴広を連れて行くなんて・・チョットも知らされていなかった私は驚いてしまいました。
けれども・・敬様の中では「弟がこの旅行に参加することは規定の事実」だったのです。
『敬様と初めての旅行に・・こんなお邪魔虫が就いてくるなんて・・』と私がムクレて
いますと、敬様はもう切符を渡しておりました。
電車は混みあっていましたが、敬様が指定席を取ってくれたお陰で3人とも座ることが
出来ました。
しかし、彼は高校時代に戻ったように貴広とばっかり話をしておりまして、私は大ムクレ
です。
私も彼等のお話に入って行けば良い・・と思いますが、彼等の話は難し過ぎて脳程度の
低い私には口も挟めないのです。
バスに乗って滝や寺院を見学しました。
「折角の旅行なのに・・如何して・・貴広なんか誘ったのよ・・?」
弟がちょっと離れた隙を見て敬様に囁くと、彼は「いいじゃないか・・?お前の弟なん
だから・・・」と、ニヤリと笑うばかりです。
敬様の取ってくれた旅館は日本式の1流旅館でした。お盆のお休みの間で、家族連れで
満員です。次の間の付いた広いお部屋に女中さんに案内されました。
窓からは深緑の溪谷が見渡される、素晴らしい眺めです。
『敬様と2人では無いのはちょっと残念だけど、こんな素敵な旅館を選んで下さった敬様
に感謝しなければならないわ・・・』と思っております
夕食の前に散歩に行きました。勿論。3人とも浴衣姿です。女に成った私は襟を左前に
しまして、腰紐を胸高に巻いてもう何処から見ても女性です。
「こんな・・素敵なところに連れて来ていただいて・・ありがとうさんです・・」
敬様に言いますと、彼はニヤリと笑いました。彼がそんな笑い方をする時は何か企んで
いる時です。
私には敬様の企みを想像出来ませんでした。( つづく)
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