小説 舞の楽園 （ フェイクレディのあたし ）

　　　　　フェイクレディのあたし　（　マンションの自治会長　－１　）
（１） あたしのマンション
　あたしのところのマンションは築３０年なんです。そのマンションには３０
世帯が入居しているのです。
お部屋も１LDK、２LDK、３LDKと３種類くらいあって、独身者も６人ぐら
いはいるようなんです。
右端のエレベーターがあって、４階でエレベーターを降りると６軒目があたし
の２LDKのお部屋で、その３軒手前の２DKが、現在自治会長をしている森さ
んのお部屋なんです。
森さんは数年前に退職をして、奥さんを亡くして独り者で、気楽な生活をして
いるようなのです。
あたし？　あたしは２５歳のチョンガーで、会社員です。
新年度から新たに自治会の役員をやることになっているのです。
もっとも、役員はみんなが持ちまわりでやっているのですが、会長の森さんだ
けは数年前から会長をやっているようで、このマンションのことだったらば、
１から１０まで何でも知っているようなんです。
あたしはこのマンションに引越して来て４年目、初めての自治会の役員の会計
部長を引き受けたのです。会計部長などと言うと、ちょっと偉くなったように
思えました。
３月、４月は新旧の役員の交代で、下手をすると土曜、日曜なんかは、毎週の
ように集まりがありました。
そんなことで、同じ階に住んでいながら挨拶をする程度で、今まで話したこと
もない自治会長と言葉を交わすようになって、とんでもないことになってしま
ったのです・・・。

　あっ、あたしですか？
あたしは都心にあるある工務店に勤めている会社員なのです。会社は工務店
なのですが、十数名いる経理課の課員なのです。
そういうこともあって、自治会では会計を任せられることになったのです。
あたしは３人兄弟の末っ子で、上２人の姉は超が付くくらい活発でしたが、男
のあたしは晩生で大人しくって、姉２人の言いなりでした。
大分の田舎では、男のあたしまでを混ぜて美人３人姉妹と噂をしていたような
のです。
もっとも、小さい頃はピンクや赤色系の姉達のお下がりを着せられて、女の子
のように育てられていたのです。
それに姉２人もそうですが、色も白くて目鼻だちも姉たちにそっくりなんです。
上の姉２人はもう結婚しまして熊本と福岡に居ますが、男の末っ子でちょっと
年が離れたあたしとしましてはそんな噂が嫌で、高校を卒業するとすぐに東京
へ出てきてしまったのです。
一番初めは会社の寮へ入ったいたのですが、会社に出入りする建築屋さんが「
格安の中古の出物がある」と言う話を持って来てくれたのです。あたしは購入
することにしたのです。
もっとも、マンションの購入資金の3分の１は田舎の両親が出してくれまして、
あたしの今までに貯めた預金が3分の１、残りはローンという形にはなりまし
たが・・・
とも角、若いあたしが結婚の予定も無しに1戸のマンションのオーナーになり
ました。（続く）