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小説 舞の楽園 ( フェイクレデイのあたし )

     フェイクレディのあたし( マンションの自治会長 -3 )
    (3)会長のお部屋
 「どうぞ! 散らかっていますが・・・」
お部屋に入ると、森さんはLDKに置いてある椅子を勧めてくれています。
部屋の中は独居老人の住いということで、もっと散らかっていると想像したの
ですが、意外と片ずいていて綺麗なのです。むしろ、あたしのLDKの方が
ゴチャゴチャと物が散らかっているようなのです。
{森さんは綺麗好きなんだな・・}と思えて、尊敬の眼差しで森さんを見てい
ます。
「あなたのような若い方はコーヒーの方がいいでしょうね。インスタントです
が・・」
そう言って森さんはポットに入っているお湯をコーヒー茶碗に入れてくれまし
た。
それを飲みながら世間話やあたしの会社の話をして、森さんの知識の豊富さに
は驚かされています。ますます、この自治会長の森さんを尊敬するようになり、
いかにも好々爺した顔や森さんの動作が好きになっていったのです。
森さんとお付き合いをする自治会の役員としてのこの一年を、楽しく思えるよ
うになっておりました。
話が弾んで、どちらからとも無く、エッチなしもネタな話になってしまったの
です。

 森さんはお話が巧みで、その話はとっても面白いのです。
もうその頃には、森さんはあたしにとってはパパのような感じに変わっていて、
何でも話せるようなそんな雰囲気が出来上がっていたのです。
「和人は如何して結婚をしないんだね? 家もあるし、そんないい男だったら、
婚約者ぐらいは当然いるんだろう?」
あっ、あたしの名前を言うのを忘れていました。
あたしの本名は宮乃木和人っていうのです。
「パパ。婚約者なんていませんよ。それに・・僕の身体は欠陥があるようなん
です・・・」
もう、その頃には森さんはあたしのことを「和人」、あたしは森さんのことを
「パパ」呼び合うようになっていました。
あたしは自分の肉体の欠陥らしきことを森さんに言うつもりはこれっぽっちも
無かったのですが、森さんがあまりにも親しそうに優しく言うので、思わず口
を滑らせてしまったのです。
森さんとのこうした雰囲気に酔っていたのかも知れません。
でも、{あたしの男性自身が本当に女の人に使用可能かどうか知りたい}と言っ
た欲望というか切実な願望もあって、生身の男性の肉体にも興味があったこと
は本当の話です。

 「和人の肉体の欠陥?」
森さんは(いや、こうなったら今からはパパと呼んでも可笑しくないでしょう
)パパはコーヒーをズルズルと音を立てながら最後の一滴まで飲み込むと、不
思義そうな顔をしてあたしの顔を見るんです。
あたしはシマッタと思いましたが、もう遅かったのです。
「本当のことを話してごらん」
パパは心配げに言います。本当のことを話さなければならないような、雰囲気
が支配しているのですから・・
「僕のは小さいようなんです。女の人とは・・シタことはありませんが、女の
人が満足しないんじゃないかと・・思われるのです」
パパはあたしの「肉体の欠陥」と言う言葉でピーンと来ていたようなんです。
あたしは飲んでしまったコーヒーカップの縁を、女の人が付いた口紅を拭き取
っているような仕草で中指で触りながら、思い切って恥ずかしいことを告白し
ていたのです。
コーヒーカップの縁を指で触って拭くのは、あたしのモジモジした時の癖なん
です。
田舎の家で姉達と僕がコーヒーや紅茶を飲むときに、姉達は口紅の付いたカッ
プをそうして落としていたので、あたしも真似をしているうちに癖になって
しまったようなのです。(続く)
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