カミングアウト
- 2019/10/06
- 19:58
カミングアウト (そうすれば家族) < 3 >
妻が入院して約5カ月後、水曜日のことです。
この度高校2年生になる息子の和樹と3か月振りに2人揃って病院へ行きました。
実は、家業の総菜屋は父の代から土曜・日曜は営業をしておりますので、水曜日だけが
休業日なのです。
そして、息子の和樹は学校がありますので、父子揃って一緒に病院へは行くことが出来
ないのです。そこで、春休みになるのを待って一緒に行くことにしました。
痛々しく痩せた妻は病床で私達を迎えてくれたのです。もうベッドを立てて話をするこ
とさえ出来ないのです。
それでも喜んでくれて、帰りには「お父さんを宜しくお願い‥ね」と言って、逆に私の
ことを心配してくれたのです。
息子は「任せてよ・・お母さん」と言っていました。
ガリガリに痩せ細った妻を見ていることが出来ませんで、私はトイレへ行って泣いてい
たのです。
その帰り道のことです。
その日はお店も休みで時間もありますので、高速道路を使わずに一般道で帰ることにし
ました。
久し振りに軽自動車の助手席に座った息子は、往きは学校のことなど私の質問に結構答
えてくれていましたのに、帰りは何か考えことをしているようで口が重いのです。
もっとも、息子は普段から私に対しては無口なのです。けれども問いに対しては答えは
返してくれるのです。 ・・が、話題を提供すると云うことは滅多にありませんでした。
妻の症状を見て、ショックを受けたのだろう・・と私は思っておりました。
その帰り道です。5キロぐらい森の中を通ります。
「チョット・・その径を入って・・よ」
曲がりくねったのです。登り坂になっていまして、スピードは出ていませんでした。
息子の言によって、慌ててハンドルを左に切って、息子の指さす小径に入りました。
息子はオシッコでもするのか・・と思いました。
その小径は車が1台やっと通れるほどの小径でして、舗装もしていなくってワダチの跡
も微かで、人も滅多に通らないような道でした。
入り口から50mほど入ったところに車が2台やっと停車出来る小さな広場がありま
した。広場と言っても、低い草が茂っておりました。
「ここで・・停めて・・」
背丈の低い草を描き分けるようにして軽自動車を停めました。
しばらく、息子は車を降りないで、黙ったまま前方を睨んで考えております。
「オシッコではないのかい・・?」
何故だか判りませんが、怒ったような雰囲気を漂わせている息子に、痺れを切らせた
私は聞きました。
私の問いに答えることなく、息子は草の茂みが揺れているのを見ています。
「何を怒っているのだい・・?」
暫く私も草の揺れるのをみておりましたが、そう聞こうかと思った時でした。
「お父さん。寂しいんだろう・・?」
突然、息子が言い出したのです。
「俺。見たんだ・・!お父さんがオナニーをしているのを・・それも張り型を使って
アナルオナニーをしているところを・・」
私は吃驚してしまいました。そして・・真っ赤になって下を向いてしまったのです。
(つづく)
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