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小説 舞の楽園  ( カミングアウト )

   
         カミングアウト (そうすれば家族) < 11 >

   それが・・車の中の暴行なのです。
 息子の和樹は、妻の病状を見て『お母さんンの依頼を拒むことは出来ない・・』と思っ
 たようなのです。
 そして・・女になっている私の声を聞いて、私がお母さんになっているのだ・・と思っ
 た見たいなんです。
 悪いことに、アナルオナニーをした日に、汚れたシーツと張り型を持って全裸のままで
 息子の前に立ったのです。私の手にある張り型に息子は気付いてしまったのです。
 実際は強盗さんに襲われた人妻を演じたのですが、その時に上げていた喜びの声を聞い
 てしまった息子は「わたしが寂しくってお母さんになって、アナルオナニーをしていた
 のだ・・」と勘違いをしてしまったようなのです。
 でも・・私が寂しくってオナニーをしてしまった・・と云うのは、あながち間違いでは
 ありません。それを、私は否定できないのです。

  そこで・・「お父さんは寂しいんだろう・・?僕がお母さんの代わりをして上げれば
 いいのだけど・・それは無理だ!」
 「そこで、お父さんがお母さんになって、僕がお父さんいなればいい・・と考えたん
 だ。そうすれば、本当の家族になれるよね・・」
 如何云う発想か・・未だに判りませんが、息子は本気でそう思っているようです。
 で・・車の中で犯されてしまった時に、確かにそう言ったのです。
 私は犯されてしまったショックと息子の男性自身が張り型なんかよりもズ~と気持ち
 が良かったこともありまして、強く否定はしなかったのです。
 いえ・・実の息子では無く養子の息子だ・・と云う息子に対する憐れみがあったのか
 もしれません。

 
     ( 葬儀を終えて )
   妻を見舞った2日後です。
 「妻が危ない・・」と病院から電話がありました。
 学校は行っている息子を呼び出して、一緒に病院へ駆けつけました。私と息子の顔を
 見た妻は安心したのでしょう・・息を引き取りました。
 右手を握った私を見て「あなた・・ありあとうございました。わたしは幸せでした」
 そして左手を採った息子を見て「お父さんを宜しく・・ね」と言って息を引き取りま
 した。安らかな寝顔でした。
 息子も私も大泣きしました。涙が出て来て止まらないのです。
 私のこれまでの人生で一番悲しかった出来事です。

  葬儀が終わって、私はお店に息子は学校生活を再開しました。
 息子が休んでいる間に、部活のハンドボール部は新人戦を終えて、1週間の自主練習に
 入っていたそうです。
 4月も中旬の土曜日のことです。
 「ちょっと疲れたので・・2階へ行って休みます」
お弁当の配達も終わりまして、精神的な疲れが残っていたのでしょう・・2階で寝よ
うと思いまして、従業員のオバサン達に断って2階へ上がりました。
ところが・・誰もいない・・と思っていた2階には、息子が学校から帰って来ていた
のです。
亡き妻の遺影に手を合わせていたのです。(つづく)

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