小説 舞の楽園 ( カミングアウト )
- 2019/11/07
- 18:09
カミングアウト (そうすれば家族) < 34 >
驚かない方が可笑しいですよね・・
こうなったならば・・蒼い顔をしていた私も覚悟を決めました。女って度胸を決める
と強くなるものですね・・私も女の端くれですから・・
「皆さん・・」
今まで、勿論家の中だけですが、練習して来ました高い女声を出しますとパートさん
達の騒音が止まりました。誰もが不信そうな顔をしています。
「わたくし。男を捨てて女になりましてよ。ここにいらっしゃいます和樹様のオンナ
に・・いえ妻になりましたのよ・・」
一呼吸置いて、確心からズバリと申しました。
「わたくしの夫となりました和樹様によって「頼子」と言う素敵な名前も頂きまし
た。皆さんもわたくしを呼ぶときには、どうぞ「頼子」と呼んで頂きたいと思って
おりますわ・・」
パートの皆さんは思ってもいなかった出来事だったのでしょう、私のお化粧も完璧な
顔と、和樹様のお顔とを交互にみてしわぶき1つしませんでした。
「今日こうして、女になったわたくしを皆さんにカミングアウトすることは、わたく
しが望んだことでございます。そして夫である和樹様も賛成して下さったことでござ
いますのよ・・」
パートさん達は顔を見合わせています。
「それから、このお店のことでございますが・・このお店を閉めることも考えました。
・ ・けれども、もし皆さんが女になったわたくしを認めて下さるならばでございます
が、わたくしの父が残したこのお惣菜店を今まで通り続けて行きたいと考えておりま
すのよ・・」
「どうか・・宜しくお願いいたしますぅ・・」
そこまで申しますと、皆さんの顔が明るくなりました。話の途中から自分達の明日に
繋がることが理解出来たのだろうと思います。
そして・・興味深い最初の顔に戻りました。
「わたし達。今まで通りこのお店で働けるのね・・!」
「わたし達。社長さんが男性でも女性でもいいわよ・・。ねっ」
社長が変っても、自分達が今まで通り働けるのだ・・と解ってパートさん達は皆笑顔
を取り戻しました。お惣菜を作る仕事ならば、他のところにもあると思われますが、
このお店は居心地が余程いいようです。
そんなこんなで・・結局のところ、私のカミングアウトは成功したようです。
それから約1時間。最初のお客様が来店するまで、パートさん達の質問責めは続き
ました。
「社長さん・・あっ。これからは頼子さんとお呼びいたしますわ・・ね!」
1番年上の野上さんと云うパートさんがそこまで言うと、他のパートさん達の貌を覗
き込みました皆さんが顔を見合わせて頷いています。
その時の皆さんの雰囲気は、私を女として認めてくれたようです。・・と言うよりは、
皆さんと同じ女性としてお仲間に加えてくれた・・と私は思ったのです。(つづく)
スポンサーサイト