小説 舞の楽園 ( カミングアウト )
- 2019/11/08
- 14:00
カミングアウト (そうすれば家族) < 35 >
「改めて・・頼子さん。何時から女になったの・・?」
皆さんの好機の眸に刻まれて、私は顔に血が登るのを感じています。いえ貌どころかノー
スリーブのワンピースから出ている腕も真っ赤になっていました。
「その質問には僕が答えよう・・」
私の剥き出しの肩に手を置いていた和樹様がそう申しました。
『どうせ判ってしまうことなのだ・・。今話した方がいい・・』と思ったのでしょう。も
う開き直っていたそうです。
女になった私を少しでもフォローしたい・・気持ちもあったのでしょう・・
和樹様は本当に頼れる夫なんです。
「お母さんが死ぬ3日前のことだ。お見舞いに行った時に言われたんだ・・」
好気の眸をしたパートさん達を前に、和樹様は臆することなくとつとつと語り始めまし
た。
ソ~ッとお顔を仰ぎ見ますと、彼は遠くを見つめるような眸をしておりました。
「家族になってくれて・・ありがとうね。これからもお父さんを助けて上げて・・ね」
って言われたんだ」
私を含めまして女性6人はしわぶき1つしないで彼の言葉に聞き入っています。
「僕はお父さんが・・お母さんが入院して寂しがっているのを知っていた。僕がお母さ
んの代わりを勤めれば・・と思ったんだ」
「ところが・・見ての通り、僕の方が身体が大きくなっているんだ・・。そこで・・僕
が夫になって、頼子が女に・・妻になればいい・・と考えたのだ・・!」
そこまで1気におっしゃると、和樹様は私の肩を抱いていた手に力を込めました。
もう「お父さん」とは言いませんで、「頼子」と呼んでいます。
彼は他人が何と言おうと、何と考えようと、自分の気持ちのままに生きて行くことを
決心した見たいです。
私は自分達の恥部を晒すことの恥ずかしさで、躯を真っ赤に染めながらも彼を頼もしく
思い、肩に回っている腕をソ~ッと手を添えていました。
「僕は頼子が寂しがっていることを知っていた。僕がお母さんの代わりを勤めればい
い・・と思ったのだが・・。僕の方が大きいんだ。だから・・僕が夫となり、頼子が女
になれば・・と考えた・・」
「そうすれば・・ズ~ッと・・一生家族で居られる」
「そこで・・病院の帰りに、車の中で頼子を襲ったんだ・・!酷いことをしたと思って
いる。頼子は処女だったんだ・・」
そこまで1気にしゃべると、和樹様は肩を抱いていた手に力を加え私を引き寄せました。
思っても見なかった仕草に、私は彼の胸の中に入ってしまったのです。
「お母さんの葬儀が終わって1週間ばかり過ぎた時だった。お母さんの遺影に誓った
んだ!」
「これからは家族として仲良くやって行きます!心配しないで見ていて下さい・・ってね」
私の背中を抱いていた彼の手には力が籠っています。
「そして・・その晩に、再び頼子を抱いた!頼子を完璧に女にするために・・。そして
頼子は僕の妻となった・・」
そこまで和樹様が語った時に、お化粧をした私の眸から突然ポロポロと涙が溢れて来まし
た。
いえ・・犯されてオンナになったことが悲しくって・・ではありません。夫となった若い
和樹様が信頼できる優しく強い男性になったことが嬉しくってです。(つづく)
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