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小説 舞の楽園  ( カミングアウト )

   
         カミングアウト ( そうすれば家族 ) < 36 >
 和樹様はそう言うと、マスカラが流れて黒い色の着いた私の涙に口を付けて吸い取ってく
れたのです。
 その夫の行為にまた、激しく号泣してポロポロと涙です。
 5人のパートさん達は唖然として夫の話に聞き入っておりました。
 夫の骨董無形なお話にも、私の涙に唇を寄せて吸い取ってくれた行為にも、度肝を抜かれた
 ようで貌を見合わせることもしませんでした。
 ところが・・私が顔を覆って号泣し出すと、誰からともなく拍手が起こりまして、5人全員
 が感動したように激しく手を叩き始めたのです。
 私はまたまた涙です。
 彼女達の眸には、黒い涙を吸い取って下さる和樹様の姿が、とても私を愛してくれている
 のだ・・と写ったのでしょう。感動的なその行為に思わず拍手をしてしまったのでしょう
・ ・

「ゴメンナサイ・・」
 泣いていた私はそう呟いて、感動の涙を拭きに化粧室へ駆け込みました。
 だって・・両手で貌を覆っていました手が黒く染まっているのですもの・・涙で顔が酷く
 なっていることに気付いたのです。
 私も女の端くれに加わったと思います。酷い貌が耐えられなかったのです。
 和樹様をここに残して洗面所に行くことは、皆さんの質問攻めに会うことでしょう・・と
 言うことは判っていましたが、顔が酷くなっていることに耐えられなかったのです。
 お店の化粧室はパートさん達のために、広く取ってあります。鏡も大きな鏡が付いていま
 す。
 その鏡に泣き腫らしたダンダラ模様の顔が映っています。でも・・何だか嬉しそうな顔で
 した。
 水道のお水を出して、酷い貌を洗いました。
 本当はお化粧まで直したかったのですが、今日のカミングアウトの結果が気になっていま
 すし、慌てていたのでハンドバックは持って来ませんでした。
 女になったのだから・・お化粧道具を持ち歩くことは常識ですよね。
 幸いにも、今朝付けました付け睫毛は剥がれていませんでしたので、まず何とか女の顔を
 維持出来ています。

  化粧室を出て行きますと、私の想像した通り和樹様が質問責めに会っていました。
 「血が付いていたよ・・」と赤くなりながらも、答えているのが聞こえましたから、きっ
と私が初めて犯された時のことを語らせられているのでしょう・・
その様子は母親が可愛い息子に対する母親みたいな感じがしました。勿論、パートさん
達が母親で和樹様が息子です。でもそれは致し方無いと思われます。
パートさん達は和樹様がここにいらしゃった時から可愛がってくれていたのですもの・・

 また顔に血を登らせた私は「ゴメンナサイネ」と夫に謝りました。夫は黙って剥き出し
 の私の肩に手を置いています。
 「お熱いのね。社・・頼子さん。お化粧を落としたのね・・」
 真っ赤になった私が肩に回った彼の手をそっと手を添えると、その様子を見たパートさ
 んが唱和しましたが、。
 「頼子さんは色が白いから、お化粧をしなくてもいいわ・・ね」
 2番目に年上の坂下さんが羨ましそうに言って、他のパートさんに同意を求めます。
 もう・・パートさん達は私を女として認めてくれたようです。(つづく)





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