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小説 舞の楽園  ( 盗み聞き -15 )

        盗み聞き  -15
 「開いているよ~」
中から大谷の大きな声が聞こえて来た。
「失礼します」
扉を開けた遥の声は小さく女の子のイントネーションだった。
「良く来てくれたな。待っていたんだよ・・・」
大谷は大きな目を細めてニコニコしながら遥の家と同じ造りの玄関にやって
来て、遥の手を引かんばかりに喜んでいる。
「どうぞ!掛けて下さい」
靴を脱いで上った遥に対して敬語を使っている。昨日は敬語なんて使わなか
ったと思っている。大谷は遥を女性として見ているのではないか・・と思っ
てしまう。
大谷は女性には優しい・・と云うだけあって、自分の言葉通りの男のようだ。
大谷の1DKには撮影機材や撮影に使われると思われる機材で山となってい
たが、それでも一応は部屋の隅に置かれていた。
部屋の中には大きめのダブルベッドが鎮座しているが、その周囲は綺麗に
片付いていた。
遥はこの部屋の様子を見て、きっと遥が来るであろうと思った大谷が部屋の
中を慌てて片付けたものであろうと推測している。
そう思うと、大谷の顔も愛嬌があるように思えてくるから不思議だった。ギ
ョロッとした眸も、今は怖さも薄れている。
「そこのベッドに腰を下ろして下さい。あなたのところみたいに、ここには
椅子が無いので・・・」
大谷は傍にあった小さな組み立てのテーブルを引き寄せて、本当に済まなそ
うに言っている。
昨日は遥のことを『あんた』と呼んでいた筈であるが、今日は『あなた』と
言っている。
「はい・・・」
物珍しげに撮影機材を見ていた遥は引き寄せてくれた机の前のベッドに腰を
降ろした。
大谷の家は食卓テーブルは無い。この長さ60cm、幅30cm位の小さな
机が食卓の代わりらしい。
「今、コーヒーを入れます。あっ、コーヒーでいいですか?インスタントし
か無いのですが・・・」
大谷が女性に対するように遥に対して気を使っているのが理解できて、遥は
嬉しくなった。
この男だったら、肉体を許してもいいとさえ思い始めている遥だった。

 「僕の彼女になってくれるかい?」
コーヒーを運んで貰ってベッドの縁に並んで座って、学校のことや田舎のこ
と等答えていた遥は、いよいよ来たと思っている。
「ええ。その積りで来ました。だって・・・お金はないし・・」
そこまで言ったところで、大谷が後を引き継いだ。
「300万円の金は支払うことが出来ないし、学校に写真を送られるのはも
っと困る・・・でしょう?そこで、身体を僕に与える決心をした・・・と
言う訳ですか?」(続く)
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