小説 舞の楽園 ( 義父の白いオブジェ )
- 2020/01/14
- 00:28
義父の白いオブジェ(1)
<1>オブジェの想い出
「あれっ・・・居るのかな?」
鍵穴に鍵を差し込んで右に廻したが開かない。
扉のノブを掴んで廻して見たけれど開かない。独り言を言って俺はもう1度
鍵を差し込んでカチャッと鍵を反対側に廻した。今度はすんなりと扉は開い
た。
この鍵は1週間前に妻の母親、つまり義母から手渡された妻の実家のマンシ
ョンのキーである。
今日、妻は都立の病院の産婦人科に入院したはずであるし、義母も妻に就い
て病院へ行っているはずである・・・と考えていた。
同居している義父は小さい会社であるが部長職にあり、今日も出勤していて
このマンションの部屋には居るはずもないと考えていた。
現在この住宅に居住しているのは、1週間前から寄生している俺を含めて4
人である。
俺は今日は、こちらの方へ販売の仕事に出張で来ていて、ちょっと早いが
直帰をしていた。
「ただいま・・・」
家人が居ないと分かっていても、一応は声を掛けてからLDKに上がり込んだ。
ニュースでも見ようと思い居間のテレビのリモコンを探していると、奥の部
屋の方から「ウ~ンッ、ウ~ン」と微かな声がするのに気が付いたのだ。
俺はハッとした。玄関の鍵が掛かっていないことをおかしいと思ったことに
気が付いたのだ。
この時間に玄関の鍵が掛かっていないこと等を考え合わせると、泥棒でも入
って義母が猿轡でもされて縛られていることを想像した。義母が何かの都合
で病院から帰って来たことも考えられるからである。
まだ泥棒が居るかもしれないと思うと、緊張で足が竦む思いだった。
武器になりそうな物を眼で探しているが居間には何も無い。仕方無しに玄関
まで行くと金属製の靴べらが目に入ったので、少し頼りは無いけれども何も
持たないよりは増しであろうと考えて、ソロリと唸り声のする奥の部屋のノ
ブを廻した。
そこは義父と義母の寝室であり、俺は入ったことがなかった。因みに今俺達
の寝室はLDKの直ぐ裏にある部屋である。
音がしないようにそぉ~と注意しながら義父と義母の寝室のノブを廻して、
そぉ~と扉を開いた。
まず、ベッドの脇の義父が使っているであろう机と上に乗っているパソコン
が見えて来た。机の前には本棚があり、キチンと整理された本が並んでいる。
義父の性格を物語っているようであり、俺にはあんな風に整理は出来ない
とこの場にはそぐわないことを考えている。
直も音がしないように細心の注意を払いながら扉を開くとベッドが見えて
来た。二つに折り畳まれた上掛けの薄い布団のピンクの色と、その先には
白いシーツが見えている。
ブーンと云う羽音のような音が聞こえたような気がした。
「・・・・・・」(続く)
<1>オブジェの想い出
「あれっ・・・居るのかな?」
鍵穴に鍵を差し込んで右に廻したが開かない。
扉のノブを掴んで廻して見たけれど開かない。独り言を言って俺はもう1度
鍵を差し込んでカチャッと鍵を反対側に廻した。今度はすんなりと扉は開い
た。
この鍵は1週間前に妻の母親、つまり義母から手渡された妻の実家のマンシ
ョンのキーである。
今日、妻は都立の病院の産婦人科に入院したはずであるし、義母も妻に就い
て病院へ行っているはずである・・・と考えていた。
同居している義父は小さい会社であるが部長職にあり、今日も出勤していて
このマンションの部屋には居るはずもないと考えていた。
現在この住宅に居住しているのは、1週間前から寄生している俺を含めて4
人である。
俺は今日は、こちらの方へ販売の仕事に出張で来ていて、ちょっと早いが
直帰をしていた。
「ただいま・・・」
家人が居ないと分かっていても、一応は声を掛けてからLDKに上がり込んだ。
ニュースでも見ようと思い居間のテレビのリモコンを探していると、奥の部
屋の方から「ウ~ンッ、ウ~ン」と微かな声がするのに気が付いたのだ。
俺はハッとした。玄関の鍵が掛かっていないことをおかしいと思ったことに
気が付いたのだ。
この時間に玄関の鍵が掛かっていないこと等を考え合わせると、泥棒でも入
って義母が猿轡でもされて縛られていることを想像した。義母が何かの都合
で病院から帰って来たことも考えられるからである。
まだ泥棒が居るかもしれないと思うと、緊張で足が竦む思いだった。
武器になりそうな物を眼で探しているが居間には何も無い。仕方無しに玄関
まで行くと金属製の靴べらが目に入ったので、少し頼りは無いけれども何も
持たないよりは増しであろうと考えて、ソロリと唸り声のする奥の部屋のノ
ブを廻した。
そこは義父と義母の寝室であり、俺は入ったことがなかった。因みに今俺達
の寝室はLDKの直ぐ裏にある部屋である。
音がしないようにそぉ~と注意しながら義父と義母の寝室のノブを廻して、
そぉ~と扉を開いた。
まず、ベッドの脇の義父が使っているであろう机と上に乗っているパソコン
が見えて来た。机の前には本棚があり、キチンと整理された本が並んでいる。
義父の性格を物語っているようであり、俺にはあんな風に整理は出来ない
とこの場にはそぐわないことを考えている。
直も音がしないように細心の注意を払いながら扉を開くとベッドが見えて
来た。二つに折り畳まれた上掛けの薄い布団のピンクの色と、その先には
白いシーツが見えている。
ブーンと云う羽音のような音が聞こえたような気がした。
「・・・・・・」(続く)
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