fc2ブログ

記事一覧

小説 舞の楽園  ( 背徳の関係 )

   
         背徳の関係   < 1 > 
(1) 覗き見
   何か誰かが叫ぶような声がしたような気がして目が覚めたのだ。
 枕元の目覚まし時計の夜光の文字を目をやると、深夜1時を15分ほど過ぎていた。
 「う~ん。ああぁ・・。ダメッ。お兄さんに聞こえちゃうわ・・・」
 寝ぼけたのでは無かった。誰かがリビングにいるようだった。

  綾夫は3歳年の違う弟の譲二と一緒に、交通事故で亡くなった両親が残してくれた
 マンションで暮らしている。
 今のは明らかに女の子の声であると綾夫は思った。
 「譲二がまた女の子を連れ込んでいるんだ・・・」
 そう呟くと、音を立てないようにソロリとベッドから抜け出したのだ。
 一緒に住んでいると言っても、綾夫と譲二はそれぞれ別々の部屋を持っており、お互
 いにプライバシーには干渉しないようにしていた。

  大学を卒業してすぐに中学校の数学教師になった真面目一方の綾夫とは違って、譲
 ニは現役の大学生であり、部活・バイト・それに夜遊びが激しくって、めったに顔を
 合わせることが無かった。
 数学教師の綾夫は25歳、今時の男性にしては小柄で160cmしか無かった。幼い頃
は病弱で身体の線も細かった。
自動車事故で亡くなった母親の血だろうか、色が白く、女顔で、目も二重でパッチリ
としている。男にして置くのは勿体無いような美男子であった。
一方、弟の譲二は父親に似たのであろう、浅黒く精悍な顔つきをしている。身長も
180cmを超えており、兄として見ても野性的で魅力的な容姿をしていた。

 半年くらい前から、譲二は時折夜中に女の子をマンションに連れ込んでいるようで
あった。
そう云う時は決まって、自分の部屋は使わずにリビングの照明を最大限明るくしてセッ
クスをするのだ。まるで、兄の綾夫に自分達のセックスを見せつけるごとくである。
綾夫は音を立てないようにソロリとベッドから降りると、深呼吸を1つした。そして
四つん這いになって、リビングに通じるドアーに近づいた。
ノブに手を掛けると、ユックリと音を立てずにほんの少し、ほんの少しだけドアーを
開いた。細い筋の光が闇を切り裂いた。
実は、数週間前の夜も同じことをしていたのだ。

 リビングの煌々たる明るい照明の下で、床に引いてあるモスグリーンのジュウタン
の上、四つん這いになった全裸の女の子の鮮やかな白い裸身が浮かんでいた。
今宵の女の子は黒いアイマスクで目隠しをされて、両の手首を赤い紐で結わえられて、
その背中に覆い被さるようにこれも全裸の譲二が交わっていた。
女の子の白い躯と譲二の褐色で男らしい性感な身体がコントラストを描いて、やけに
鮮やかだった。2人の絡みを美しいとさえ綾夫は感じている。
なぜか・・綾夫にとっては犯している譲二ではなく、犯されているその女の子が羨ま
しいと感じていた。(つづく)


  
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

舞

Author:舞
FC2ブログへようこそ!