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小説 舞の楽園 ( 義父の白いオブジェ )

       義父の白いオブジェ(60)
 「カミングアウトか・・・その社長がお前の気持ちを理解してくれるかな?」
「そうね。理解してくれるとは思わないけれど、お世話になった社長さんでし
ょう?筋は通したいのよ・・・」
彼女は嫣然と笑って言った。俺の信子は強い女だった。自分の信念を通そうと
しているのだから・・・
もし、これが逆の立場だったら、俺は隠れて逃げ出していると思っている。
信子は強い、素晴らしい女だった。

 それから、1年が過ぎている。
カミングアウトをした義父、信子は義母に愛想を付かされたのかも知れない
が、とも角離婚した。いや離婚をさせられた。
しかし、信子はカミングアウトまでした女にさせられた男、すなわち俺のこ
とはガンとして言わなかった。そのことは今もって、俺は美加の夫として、
子供祥平の父親としての地位を保っていることで解ると思う。
俺は信子にはますます頭が上らない。代わりに彼女を愛し続けなくてはいけ
ないと言う重い十字架を背負うことになってしまった訳だ。
しかし、俺はそのことに満足している。何故かと言うと、彼女を世界で一番
愛しているからである。

 そして、この話は終わりであるが、こんな形で悲しい終わり方はしたくは
ない。もうすこし楽しい話を語って行こうと思う。

  <14>伊豆の別荘で・・・
 5月の連休の前に信州の辺鄙な温泉で知り合ってスワッピングまでした親
父と伸子とは、実は今も続いているのだ。
1泊の予定だった親父と伸子は、2泊の予定だった俺と信子はあの日の当日
と言うか翌日と言うか、旅館の1階にあるロビーでさようならをした。
男は男同士、女は女同士で別のテーブルに着いてモーニングコーヒーを飲ん
だのだ。
明るい空色に黄色い花模様のワンピース姿に白い顔に真紅のルージュを塗っ
た信子は年よりも確実に15は若返って見えている。
彼女は伸子と親しげに話をしている。雰囲気としては美しい姉妹に見える。
俺と親父は名刺を交換した。互いに名残惜しい気持ちだった。
親父は名古屋にある土木関係の会社のたたき上げの社長のようだった。伸子
はやはり俺の睨んだとおり、その会社の事務員で社長の愛人といったところ
であった。
お忍びでこの温泉に1泊旅行に来たらしいのだが、そこで女好きの親父は俺
達2人と出会ったと言うことである。信子の女らしい身体の魅力に惹かれて
しまったらしい。
 「又、スワッピングをやりましょうよ。必ず連絡しますから・・・」
禿げ親父は名刺を交換した後にぬけぬけと言っている。余程信子の肉体が気
に入ったものと見える。
俺としても俺の女が執心されるのはとっても嬉しいのだが、信子を取られて
しまうかも知れないと心配になったのも事実であった。(続く)
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